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システム開発

【2026年版】システム開発の要件定義の進め方|発注側が準備すること・失敗しないポイント

システム開発は「要件定義で成否の8割が決まる」とよく言われます。ここが曖昧なまま進むと、後の工程で「思っていたものと違う」が噴き出し、手戻り=追加費用につながるからです。

前回までの外注先の選び方フェーズ別の費用に続き、この記事は「発注する側が、要件定義で何を準備し、どう進めればいいか」に絞って解説します。要求と要件の違い、機能・非機能要件、キックオフ前に用意すべきこと、契約との関係、そしてAIの使いどころまで、受託開発の当事者として、IPAなどの資料も引きながらまとめます。丸投げはしないけれど、専門家でなくても準備できる——その現実的な線を示します。

01要件定義とは:工程のどこにあるか

要件定義は、実際にプログラムを作り始める前の「上流工程」にあたり、そのシステムに必要な機能や条件を明らかにする作業です。開発の進め方を表すV字モデルでは、要件定義は最後の「受入テスト(発注側が納品物を確認するテスト)」と対になります。つまり、要件定義で決めた内容が、そのまま“合格の基準”になるということです。

だからこそ、上流がぶれると後工程に響きます。一般に、要件の欠陥や認識のズレは、後の工程で見つかるほど直すのに手間がかかると言われます。逆に言えば、発注側が要件定義にきちんと関与することが、いちばん効く「手戻り防止」です。

「丸投げ」と「関与」は違う

発注側が仕様を隅々まで書く必要はありません。ただし、「誰の・どんな困りごとを・どう解決したいか」と、譲れない条件・優先順位・予算・納期は、発注側にしか分かりません。ここを言語化して渡すのが発注側の役割で、それを仕様に落とす作業は、上流から伴走してくれる開発会社に任せて構いません。

02「要求」と「要件」は違う

混同されがちですが、実務では「要求」と「要件」を分けて考えると整理しやすくなります。一般的な整理は次のとおりです(用語の使い方には幅があります)。

要求(要求定義)要件(要件定義)
中身何を実現したいか(やりたいこと)それを満たすために備えるべき条件
主な言葉業務・ビジネスの言葉システムの言葉
主に担うのは発注側開発側(発注側と合意しながら)
「問い合わせ対応の時間を半分にしたい」「問い合わせを一元管理し、○秒以内に検索できる画面を持つ」

ポイントは、発注側の仕事は立派な「要件」を書くことではなく、確かな「要求」を出すことだという点です。「なぜやるのか(目的)」と「どうなれば成功か」をはっきりさせておけば、要件への翻訳は開発側が担えます。

03機能要件と非機能要件

要件は大きく「機能要件」と「非機能要件」に分かれます。機能要件は“できること”(画面・帳票・データの登録や検索など、システムの動作内容)です。非機能要件は“どのように動くか”という品質・条件面で、見落とされやすい一方、後から効いてきます。

非機能要件の代表的な観点は、IPA(情報処理推進機構)の「非機能要求グレード」が参考になります。これは、発注側(ユーザー)と開発側の認識の行き違いを防ぐために、非機能の要求項目を洗い出して段階的に示したツールで、次の6つの大項目で整理されています。

  • 可用性 — 止まらずに使えるか(稼働時間、障害からの復旧など)
  • 性能・拡張性 — 速さや同時利用、将来の増加への耐性
  • 運用・保守性 — 監視・バックアップ・変更のしやすさ
  • 移行性 — 既存データやシステムからの移し替え
  • セキュリティ — 不正アクセスや情報漏えいへの対策
  • システム環境・エコロジー — 設置環境や省電力などの条件

非機能は「機能が固まってから」観点リストで点検する

非機能要件は、機能がある程度固まってから、観点リストにそって機械的に確認するのが実務的です。その際、「今回は対象外」と決めたものも記録に残しておくと、後の“言った言わない”を防げます。また、「使いやすく」「柔軟に」「速く」といった測定できない言葉は、できるだけ数値や条件に置き換えます(例:『検索結果が2秒以内に表示される』)。

04発注側がキックオフ前に準備すること

要件定義を始める前に、発注側だけで用意しておくと進みが段違いに良くなるものがあります。専門知識は不要で、社内の情報を整理するだけです。次の6つを“持ち物”として準備してください。

  • 目的・ゴールの言語化 — 「誰の・どんな困りごとを・どう解決したいか」「どうなれば成功か」を1〜2文で
  • 現状業務の棚卸し(As-Is) — いまの手順・使っているツール・困っている点。簡単な業務の流れでよい
  • 既存システム・データの一覧 — 今使っているシステム、連携が必要なもの、引き継ぎたいデータ
  • 社内の登場人物と決裁ルート — 誰が使い、誰が要望を出し、最終的に誰が決めるか
  • 予算・納期の目安と譲れない条件 — 上限と“いつまでに何が要るか”
  • 「やらないこと」の線引き — 今回は対象外にする範囲。スコープの肥大化を防ぐ土台になる

完璧な資料より「提案・見積もりが作れる粒度」で十分

きれいな要件定義書を自力で仕上げる必要はありません。開発会社が中身を理解して、提案と見積もりを作れる程度に整理できていれば十分です。むしろ、上流から一緒に要件を固めてくれる会社を選び、この“持ち物”を持って相談に行くのが、遠回りに見えて最短です。

05進め方と、優先順位のつけ方

要件定義は、おおむね「洗い出し(ヒアリング)→整理→優先順位づけ→文書化→合意(レビュー)」という流れで進みます。ここで効くのが優先順位のつけ方です。すべてを『必須』にすると、費用も期間も膨らみ、結局どれも中途半端になります。

よく使われるのが「MoSCoW(モスクワ)」という4分類です。Must(必須)/Should(あるべき)/Could(あれば良い)/Won't(今回はやらない)に振り分け、Must を欲張りすぎないのがコツです。まずは事業の価値がひとつ伝わる中核から固め、周辺は段階的に、という考え方は、前回の

フェーズ別の費用の記事で触れた「全部を一度に作らない」という進め方ともつながります。要件定義の成果物である「要件定義書」には、背景・目的、業務の流れ、機能の一覧、非機能要件、画面・帳票、外部連携、対象範囲、用語の定義などを、一般には盛り込みます。ただし体裁より、関係者が同じ理解になっていることのほうが大切です。

発注前に「動くモックアップ」で確かめる

文書だけで認識を合わせるのは難しいものです。近年は、本格開発の前に画面だけが動く簡易な試作(モックアップ)を作り、操作感を見てから要件を固める進め方が有効です。認識のズレを早い段階で潰せるため、着手後の手戻りを大きく減らせます。当社でも初回相談の段階でこの進め方をご提案しています。

06契約との関係:準委任と請負の使い分け

要件定義は「これから中身を固める」段階なので、成果物をあらかじめ確定しにくい工程です。そのため、要件定義フェーズは準委任契約、その後の開発フェーズは請負契約、という多段階の使い分けが一般的な進め方として紹介されています(IPAのモデル取引・契約書など)。

  • 準委任契約 — 専門家として業務を遂行すること自体に対価を払う。誠実に業務を行う義務(善管注意義務)を負うが、成果物の完成そのものは保証しないのが基本(履行割合型)。近年は、成果の完成を条件に報酬を払う『成果完成型』の準委任もあります。要件が固まりきらない要件定義フェーズに向く
  • 請負契約 — 成果物を完成させることに対価を払う。仕様が固まった開発フェーズに向く

「要件定義だけをまず依頼したい」も可能です。準委任で要件定義を行い、そこで固めた内容をもとに開発を請負で見積もる、という進め方なら、いきなり大きな金額を約束せずに始められます。契約形態の詳しい話は、前回記事の契約の項も参考になります。

07AIを要件定義に活かす(2026年)

2026年のいま、要件定義の一部にも生成AIが使われ始めています。とはいえ「AIに丸投げすれば要件が決まる」わけではありません。効くのは、繰り返しの作業や下書きを軽くする“補助”としての使い方です。

  • ヒアリングの議事録の要約・整理 — 長い打ち合わせメモから要点や決定事項を拾う
  • 要求の洗い出し・抜け漏れの点検 — 目的から必要そうな機能を列挙させ、たたき台にする
  • 要件定義書やRFP(提案依頼書)のドラフト作成 — 章立てに沿って下書きを素早く用意する

決めるのは人、AIはたたき台まで

AIが作った案には、事実の誤りや、その組織の事情に合わない部分が混じります。最終的に「何を作り、何を作らないか」を決めるのは人です。特に、業務の優先順位や、非機能のどこにお金をかけるかといった判断は、発注側と開発側の合意が要ります。AIはあくまで下書きと点検の相棒、と考えるのが安全です。

08まとめ

  • 要件定義は上流工程で、後の受入テストの“合格基準”になる。ここのズレが手戻りを生む
  • 発注側の仕事は立派な「要件」を書くことではなく、確かな「要求(目的とゴール)」を出すこと
  • 要件は機能要件と非機能要件に分かれる。非機能はIPAの6観点(可用性・性能拡張性・運用保守性・移行性・セキュリティ・環境)で点検し、測定できない言葉を数値に置き換える
  • キックオフ前に、目的・現状業務・既存システム/データ・登場人物と決裁ルート・予算納期・やらないこと、の6点を準備する
  • 優先順位はMoSCoWで。Mustを欲張らず、中核から段階的に。文書より“同じ理解”を優先
  • 要件定義は準委任、開発は請負が一般的な使い分け。「要件定義だけ先に依頼」も可能
  • AIは議事録要約・洗い出し・ドラフトの補助に有効。ただし決めるのは人

当社TokyoScalerは、少数精鋭でWeb・モバイル・AIを活用したシステム開発を手がける受託開発会社です。多層下請けではなく代表(エンジニア)が上流から直接ご相談に応じ、要件定義(準委任)から、必要に応じて発注前の動くモックアップづくりまで伴走します。「何をどこまで頼めるか分からない」段階でも、初回のご相談(無料)からお気軽にどうぞ。あわせて外注先の選び方、AIを使った仕組みの開発を検討している場合はAIエージェント開発の外注、社内に開発チームはあるが稼働を補いたい場合は開発リソース不足の解消方法の記事も参考になります。

09よくある質問

Q. 要件定義書は誰が書くのですか?

文書としてまとめるのは主に開発会社(ベンダー)側ですが、その土台になる「目的・現状業務・優先順位・予算・納期・やらないこと」は発注側が用意します。発注側が要件定義書そのものを一から書く必要はありません。上流から伴走する会社であれば、対話を通じて要件を一緒に固め、文書に落としてくれます。

Q. 「要求」と「要件」はどう違うのですか?

一般的な整理では、要求は「何を実現したいか(やりたいこと。業務・ビジネスの言葉)」、要件は「それを満たすためにシステムが備えるべき条件(システムの言葉)」です。発注側の役割は、立派な要件を書くことではなく、確かな要求——目的と“どうなれば成功か”——を明確にすることです。要件への翻訳は開発側が担えます。

Q. 発注側は事前に何を準備すればよいですか?

専門知識は不要で、社内の情報整理で十分です。①目的・ゴールの言語化、②現状業務の棚卸し、③既存システム・データの一覧、④社内の登場人物と決裁ルート、⑤予算・納期の目安と譲れない条件、⑥「やらないこと」の線引き、の6点を用意しておくと、要件定義がスムーズに進みます。完璧な資料でなくても、開発会社が提案・見積もりを作れる粒度で十分です。

Q. 非機能要件とは何ですか?なぜ大事なのですか?

機能要件が“できること”(画面や検索など動作内容)なのに対し、非機能要件は“どのように動くか”という品質・条件面です。IPAの「非機能要求グレード」では、可用性・性能拡張性・運用保守性・移行性・セキュリティ・システム環境の6観点で整理します。見落とすと「動くけれど遅い」「障害時に復旧できない」といった問題が後から表面化するため、機能が固まった段階で観点リストにそって確認するのが安全です。

Q. 要件定義だけを先に依頼できますか?

できます。要件定義は成果物を確定しにくい工程のため、準委任契約で要件定義だけを先に行い、そこで固めた内容をもとに開発を請負で見積もる、という進め方が一般的に紹介されています。いきなり大きな金額を約束せずに始められるので、発注側のリスクを抑えられます。

Q. AIを使えば要件定義は自動でできますか?

自動では決まりません。生成AIは、ヒアリング議事録の要約、要求の洗い出しや抜け漏れの点検、要件定義書・RFPのドラフト作成といった“補助”には役立ちます。ただしAIの案には事実誤りやその組織に合わない部分が混じるため、最終的に「何を作り、何を作らないか」を決めるのは人です。AIは下書きと点検の相棒として使うのが現実的です。

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この記事を書いたチーム

合同会社TokyoScaler ビジネス開発部

Google Cloud Partner(Google Workspace正規代理店)として、中小企業・スタートアップのIT環境整備・DX・AI導入を支援するメンバーが、現場の知見をもとに執筆しています。

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この記事の内容、
自社ではどう進める?

「まだ何を頼むか決まっていない」段階のご相談を歓迎しています。現状を伺って、自社でできること・外部に任せたほうがよいことを切り分けるところからお手伝いします。