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DX・IT整備

非営利団体のDX|無料で使えるITツールと、始める順序

少人数で運営している非営利団体で、DXを進めたい事務局に向けて書いています。予算をかけずにITを整えたいとき、非営利団体だけが使える無料枠や割引が、主要なサービスにひととおり用意されています。メールも、資料の共有も、連絡ツールも、デザインツールも、そしてAIも含まれます。

ただし、申請の窓口はサービスごとに分かれていて、無料になる範囲もそれぞれ違います。何がどこまで無料で使えるのか、どういう順序で進めると事務が楽になるのか、そしてAIを使うときに決めておくことを整理します。細かい要件までは書きません。まず全体像をつかむのが目的です。

01非営利団体が無料・割引で使えるもの

登録された非営利団体を対象に、無料枠や割引を用意しているサービスは多くあります。事務局で使う可能性が高いものを挙げると、次のようになります。

サービス非営利団体向けの扱い
Google Workspace対象になれば無料。団体のメールアドレス、全員で使える保管場所、AIが含まれます
Microsoft 365基本のプラン(Microsoft 365 Business Basic)が寄贈、上位の Business Premium は割引という分かれ方です。寄贈の対象は有給の職員と役員層に限られると記載されています
Slackメンバーが250人以下なら、プロプランへの無料のアップグレード。250人を超える場合と上位のプランは85%の割引と記載されています
CanvaCanvaプロの全機能と、50ユーザーまで使える共同編集の機能が無料と記載されています。会報やチラシ、寄付の呼びかけに使う画像を作る場面で効きます
その他Zoom、Adobe Acrobat Pro、Docusign などにも独自の条件で割引があります。ChatGPTやClaudeといったAIのサービスにも、非営利団体向けの割引が用意されています

どれから確認するか

すでに使っているものから確認するのが早道です。全部を一度に申請する必要はありません。メールと資料の共有が一番効くので、そこから始めるのが実務的です。

対象になる団体と、ならない団体がある

多くのプログラムは、法人格を持つ非営利団体を対象にしています。法人格のない任意団体や学生団体は、対象一覧に含まれていないことがほとんどです。宗教団体、学校、病院、行政機関を対象外としているサービスもあります。当社はGoogle Workspaceの販売代理店ですが、非営利団体への支援ではライセンスの販売や取次を行っていません。この記事も、無料の範囲で始めることを前提に書いています。

02申請の窓口は、いくつかに分かれる

面倒に見えますが、窓口は大きく2つです。Goodstackという外部の審査機関を通すものと、各社に直接申し込むものに分かれます。

  • Goodstackを通すもの。Googleは自社のヘルプで、審査を担当するパートナーがGoodstackだと明記しています。Canvaも同じように、審査をGoodstackと提携して行うと自社のページで説明しています。Goodstack側の一覧には、Microsoft、Adobe Acrobat Pro、Zoom、Docusign などが並んでいます。ChatGPTとClaudeも、審査はGoodstackが担当すると各社が記載しています
  • 各社に直接申し込むもの。たとえばSlackは自社の応募フォームからで、非営利性と公益性の確認はTechSoupと提携して行うと記載されています

Goodstackを通すものについては、1つ通れば他も自動で通るわけではありません。プログラムごとに条件が違うためです。ただし一度登録していれば、以降の申請は手続きが速くなると説明されています。使うものから順に出していくのが負担の少ない進め方です。Googleの分については、対象になる法人格と審査の流れ、無料のままどこまで使えるかをGoogle for Nonprofits の申請にまとめました。

任意団体・学生団体は対象外。ただし相談先はあります

法人格を持たない団体は、多くのプログラムの対象一覧に含まれていません。その場合は、各サービスがもともと持っている無料の範囲から始める形になります。法人格を取れば対象になるので、法人化を検討している段階なら判断の材料になります。なお当社は、法人格の有無を問わず、非営利で活動している団体のサイト制作やIT環境の相談を原則無償でお受けしています。

03整える順序で、効き方が変わる

AIから入りたくなりますが、先に整えるものがあります。読ませたい資料が個人の端末に散らばったままだと、そのつど探すことになり、AIの効果も出にくくなります。

団体のアカウントを配る職員ごとに団体のメールアドレスを持つ
資料を1か所に置く手元の端末ではなく、全員が見られる場所に
AIに読ませるここで初めて要約や下書きが効きます
整える順序手前の2つが整っていないと、AIの段階まで進んでも効果が出にくくなります

Google Workspace や Microsoft 365 の無料枠を申請すると、この1つめと2つめがまとめて整います。AIのために申請する、というより、事務の土台を整えたらAIも付いてきた、という順序で考えるほうが実態に合います。

辞めた人のアカウントを、一度に止められるようにしておく

使うサービスが増えると、IDとパスワードもその数だけ増えます。職員やボランティアが入れ替わったとき、サービスを1つずつ開いて止めて回るのは手間がかかり、止め忘れも起きます。多くのサービスには「Googleでログイン」「Microsoftでログイン」といったボタンがあり、団体のメールアドレスでログインする形にできます。この形にしておくと、その人の団体のアカウントを止めるだけで、他のサービスにもサインインできなくなります。なお、SAML方式のシングルサインオンは上位のプランでないと設定できないサービスが多く、Slackの場合もビジネスプラス以上と記載されています。ただしGoogleのアカウントでサインインさせる設定のほうは、非営利枠で無料になるプロプランにも用意されています。無料で使える範囲では、まずこちらに揃えるところからで足ります。

04AIは、何に使うと効くか

事務局の作業のうち、下書きを作ってもらえるものから始めると効果が見えやすくなります。特に効きやすいのは次の4つです。

作業任せ方
助成金の申請書様式に沿った下書きを作らせ、事業の中身と数字は自分たちで書き換える
事業報告書・総会資料前年の資料と今年の記録を読ませて、構成案を作らせる
会報・お知らせ伝えたい内容を箇条書きで渡して、文章に整えてもらう
議事録録音や手元のメモから、要点と決定事項を整理させる

過去の資料を読ませる使い方

過去の資料を読ませる使い方には、NotebookLM(2026年7月にGemini Notebookへ改称)のように、渡した資料の中だけで答えるツールが向いています。助成金の申請書や事業報告書をまとめて入れておくと、「去年はこの事業をどう説明したか」を探す時間が減り、担当者が代わったときの引き継ぎにも効きます。業務での使い方はNotebookLMの業務活用にまとめました。ただし、何を入れてよいかは次の章の線引きが先です。

任せないほうがよいものもある

寄付のお礼や、相談への返信は人が書きます。相手との関係が前提にある文章だからです。Googleが非営利団体向けに公開している資料でも、共感が重要な役割を担う場面や、最終的な判断を含む場面については、AIの利用を再検討するよう書かれています。ただし下ごしらえは任せられます。相手が過去にどう関わってくれたかを資料から拾わせる、送り漏れを一覧にする。この部分だけでも時間は減ります。

05入れてはいけない情報だけは決めておく

AIを使い始める前に1つだけ決めておくとすれば、入れない情報です。会員の名簿、寄付者の連絡先と寄付額、相談の記録、支援している方に関する記録。この4つを挙げておけば、多くの場面は迷わずに済みます。

非営利であっても、こうした名簿を扱っていれば個人情報を扱う事業者にあたる、と個人情報保護委員会の資料に書かれています。人数が少ないから対象外、という線引きにはなっていません。また、名簿に触れるのは常勤の職員だけとは限りません。同じ資料では、団体の運営を担う理事や役員も監督の対象に含まれるとされています。ボランティアが触れる場面があるなら、同じ線引きを伝えておくのが安全です。

団体として申請したアカウントで使う場合と、職員が個人で作った無料のアカウントで使う場合とでは、入力した内容の扱いが変わります。団体向けのプログラムで提供されるものには、企業向けと同じ水準のデータ保護が付くと各社は記載しています。いずれにせよ、職員が自分のアカウントで団体の資料を扱っている状態は避けたいので、まず団体のアカウントに寄せるのが先です。ルールの作り方そのものは生成AIの社内ルールにまとめています。

06無料で受けられる支援を先に使う

日本NPOセンターが2025年に公表した調査では、IT人材が足りないと答えた団体が約9割にのぼりました(回答320団体)。確保できない理由として最も多かったのは、資金や予算の不足でした。生成AIを業務に本格的に取り入れている団体は7.5%にとどまります。この調査はIT研修の参加団体やIT関連のメールマガジンを中心に回答を集めているので、全体としてはもう少し厳しい可能性があります。

裏を返せば、無料で受けられる支援を使い切れているかどうかで差が付きます。次の2つは費用がかかりません。

  • Google Workspace for Nonprofits の AI & Productivity プログラム。Googleのプロダクトスペシャリストと1対1のビデオ通話で、他のサービスからの移行から職員への使い方の説明まで相談できます。2週間で最大6回、日本語に対応していると記載されています。Google Workspace for Nonprofits を有効にしてあることが条件です
  • 日本NPOセンターが日本語版を提供しているAIの学習コミュニティ。指示の書き方や非営利団体向けのAI用語集のほか、字幕の付いたウェビナーの録画も見られます。登録は無料です

腰を据えて相談したいなら、伴走のプログラムもある

同じく日本NPOセンターに、IT専門家が6か月かけてデジタル環境を診断し、改善を一緒に進めるプログラムがあります。事務所のネットワーク、共有フォルダのクラウド化、会計ソフトの選定などが対象です。こちらは無料ではなく、参加費が15,000円かかり、導入するサービスの費用は団体の負担になります。採択制で枠は全国で10団体、応募には登録と書類の提出が必要です。募集の時期は年度によって変わるため、関心があれば同センターの案内を確認してください。

有料のプランを検討するのは、無料の範囲でしばらく試してからでも遅くないことが多いです。数名の事務局であれば、まず使ってみて足りない部分をはっきりさせるほうが、手戻りが少なく済みます。

07よくある質問

Q. どのサービスから申請すればいいですか?

メールと資料の共有が最初に効きます。すでに Google か Microsoft のどちらかを使っているなら、そちらの無料枠から確認してください。両方とも使っていない場合は、職員が使い慣れているほうを選ぶのが無難です。連絡のやり取りが電話とメールで滞りがちなら、あわせてSlackのような連絡ツールを検討する価値があります。全部を一度に申請すると審査対応だけで時間が取られるので、使う予定があるものから順に出すほうが進みます。

Q. 任意団体ですが、無料で使う方法はありますか?

多くの非営利団体向けプログラムは法人格を前提にしているため、任意団体は対象一覧に含まれていないことがほとんどです。ただし、各サービスにはもともと無料で使える範囲があるので、そこから始める形になります。その場合は入力した内容の扱いが団体契約のものと違うため、会員の名簿や相談の記録は入れない前提で使うのが安全です。当社の支援については本文に書いたとおりで、法人格がなくてもご相談いただけます。

Q. 職員が2人しかいません。それでも申請する価値はありますか?

内閣府の調査では、認定を受けていない特定非営利活動法人の有給職員は中央値で2.0人、常勤に限ると1.0人です(2023年度調査)。少人数はむしろ標準的な規模です。人数が少ないほど1人あたりの事務は多くなるので、下書きを作ってもらえる効果は相対的に大きくなります。申請で得られるのはAIだけではなく、団体のメールアドレスと資料の置き場所も含まれるため、そちらの効果が先に出ることもあります。

Q. AIを使ったことを、支援者に伝える必要はありますか?

法律上の義務ではありません。ただしGoogleが非営利団体向けに公開している資料では、AIの使用を開示することが団体への信頼につながり、業界の標準になりつつあると書かれています。会報や報告書にAIを使った場合、そう明記するかは団体の判断ですが、支援者との関係を重く見る団体ほど、決めておく価値がある論点だと考えています。少なくとも、内部では誰がどこまで使ったかを把握できる状態にしておくと安全です。

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この記事を書いたチーム

合同会社TokyoScaler ビジネス開発部

Google Cloud Partner(Google Workspace正規代理店)として、中小企業・スタートアップのIT環境整備・DX・AI導入を支援するメンバーが、現場の知見をもとに執筆しています。

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この記事の内容、
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