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AI活用

AIの精度が出ないとき|精度を上げるか・人が補うか・やめるか

現場から間違いの報告が届くたびに、導入を決めた側としては肩身が狭い。追加でお金をかけて直るのかも分からない——この状態で止まっている会社は珍しくありません。先に結論です。AIが実務で間違えた例を20件ほど集めて、種類で分けるところから始まります。間違いの種類ごとに、効く直し方が違うためです。

原因がツールの選び方なのか、使い方なのか、今のAIの限界なのかは、間違えた例を分けてみるまで分かりません。作る側から見ても、最初から狙いどおりに動く仕組みは少数で、動かしてから直すのが普通の進み方です。直しても残る間違いだけ、人が補う形にするか、この業務ではいったんやめるかを選びます。どちらも、後ろ向きの判断ではありません。

情報システムの専任担当がいない会社で、AIを業務に使い始めた方に向けて書いています。受託でAIの仕組みを作る側からまとめました。

01精度が出ないとき、進む先は3つ

精度が出ないと分かったあとの進む先は、次の3つのどれかです。上げるか、やめるか。この二択のあいだに「人が補う形にする」があり、そこまで並べて初めて選べるようになります。

進む先選ぶのはどういうときか最初にやること
精度を上げる間違いの原因が、渡した資料・探し方・指示のどれかにある安い直し方から順に試して、同じ例で測り直す
人が補う形にする人がやっても判断が割れる間違いや、めったに出ない例外が残る人が確認する場所と、確認にかかる時間を決める
この業務ではいったんやめる直し方を一巡しても、いま人がやっている水準に届かない測るのに使った例と、間違いの記録を残す
間違いを集めるAIが間違えた例を20件ほど
種類で分ける4種類のどれかに置く
安い直し方から試す1つ変えたら、同じ例で測り直す
残った間違いで決める人が補うか、いったんやめるか
精度が出ないときの進め方直し方から入らず、間違いから入る。残った間違いの種類が、進む先を決める

3つのどれに進むかは、いま残っている間違いの種類で決まります。だから、精度の相談は、間違いを集めて分けるところから始まります。先に直し方を決めてしまうと、原因と関係のない場所に費用が向かうことがあります。

02モデルの乗り換えで直る間違い、直らない間違い

最初に検討したくなるのは、たいていモデルの乗り換えです。新しいモデルの話題は次々に流れてくるので、自然な流れです。実際、乗り換えで直る間違いもあります。ただ、作る側から見ると、それは一部です。原因がモデルの外にあると、替えても同じところで外します。

  • 渡した資料に、答えがそもそも書かれていない
  • 資料には書いてあるのに、探し方が業務に合っていなくて拾えない
  • 指示が曖昧で、何を出せば合格なのかがAIに伝わっていない
  • 人がやっても判断が割れる問いを、AIに投げている

この4つは、モデルの賢さの問題ではありません。しかも原因が外にあるとき、新しいモデルは間違いをよりもっともらしい文章で書くので、かえって気づきにくくなることがあります。

「AIは使っているうちに賢くなる」ともよく言われます。ただ、業務向けの設定では入力した内容は学習に使われないことが多く、放っておいて上がることは、まず期待できません。直すのは人の作業です。逆に、渡した資料が古びると、何もしていないのに下がることはあります。

03間違いの数え方と分け方

直し方を決める材料は、間違いの実例です。集め方と分け方を先に決めておくと、ここは半日から数日で終わります。

どの間違いを、いくつ集めれば足りますか

評価用の試験問題を、先に用意する必要はありません。実務でAIの出力を直した例、使えなかった例が、そのまま材料になります。まず20件ほど集めるところからです。毎日使っている業務なら、1〜2週間分をさかのぼれば集まることが多いです。そのとき、AIが何を出したかだけでなく、本当はどうあるべきだったかを横に書き添えます。この20件が、直し方を試すたびに測り直す物差しになります。

間違いはどう分けますか

集めた例を、次の4種類のどれかに置きます。どちらとも取れる例は出てきますが、どの種類が多いかが分かれば十分です。

間違いの種類よくある見え方効く直し方
資料に答えがない聞かれたことの答えが、渡した資料のどこにも書かれていない資料を足す・整える。AIの設定をいくら触っても直らない
答えはあるのに拾えない資料には書いてあるのに、別の箇所を引いて答える探し方と渡し方を直す。資料の分け方、検索の範囲
指示と基準が曖昧日によって答えの形が変わる。求めた形と違うものが出る指示を書き直す。良い例と悪い例を指示に入れる
人でも判断が割れる担当者2人に同じ問いを出しても、答えが分かれるどの直し方でも直らない。人が補うか、対象から外す

「精度◯%」は、どう測ればよいですか

正解率を1つ出して終わりにすると、業務で痛い間違いがその中に埋もれます。間違いには、見逃す方向と、余計なものを出す方向があります。契約書の確認なら、問題を見逃すほうが痛い。問い合わせの返信案なら、事実と違う内容を出すほうが痛い。どちらが痛い業務なのかを先に決めて、痛い側の間違いを数えます。

どこまで届けば合格にするかは、満点ではなく、いま同じ作業を人がやったときの水準に置きます。置き方と測り方はAI PoCの本番化の「合格ラインは、いま人がやっている水準に置く」にまとめています。

04精度の直し方は、安くて戻しやすい順に

多数派が「人でも判断が割れる」以外の3種類なら、精度はまだ上げられます。直し方は、安くて戻しやすいものから順に試します。費用のかかる方法ほど効きそうに見えますが、効く相手が違うだけです。

直し方効く間違い手間の目安
指示を書き直す指示と基準が曖昧時間単位。書き直してすぐ測り直せる
良い例と悪い例を指示に足す指示と基準が曖昧時間単位。実例は集めた20件から選べる
渡す資料を整える資料に答えがない/答えはあるのに拾えない日〜週単位。古い版の削除と重複の整理から
探し方を直す答えはあるのに拾えない日単位。作りによっては開発側の作業になる
モデルを替える上の直し方を試したあとに残ったもの切り替え自体は短い。手間の中心は測り直し
追加学習(ファインチューニング)言い回しや形式の癖週単位から。データの用意と検証が要る

直し方は1つずつ試す

2つ同時に変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。1つ変えるたびに、同じ20件で測り直してください。手間に見えますが、効かない方法を早く捨てられるので、結局は近道になることが多いです。

表の手間は目安で、仕組みの作りによって幅があります。それでも順番の考え方は変わりません。上の2つは自社だけで試せて、その日のうちに結果が見えます。外注で作ったものでも、指示文が自社側にあるなら、ここまでは自社で動けます。

追加学習は、いつ検討しますか

順番としては最後です。理由は3つあります。費用と期間が他の直し方より大きいこと。学習用のデータを揃える作業が別に発生すること。そして、追加学習で直りやすいのは言い回しや形式の癖が中心で、知識が足りない間違いは資料側の仕事だからです。表の上から試して、残った間違いが癖の問題に絞れたときに、はじめて候補になります。

05精度を追うのをやめて、人が補う形にする判断

ここまでの直し方を試しても、残る間違いはあります。人がやっても判断が割れる問いと、めったに出ない例外です。この2つは、直し方を重ねても、費用に見合うほどは減らないことが多いです。そこで、精度を追うのをやめて、人が補う工程を置く形を選べます。人が補う形は、手が尽きたあとの妥協ではなく、最初から選べる設計の1つです

向いているとき残る手間
引っかかったものだけ人が見る大半は型どおりで、例外が絞り込める引っかける条件の手入れと、確認する人の時間
全部を下書きとして人が仕上げる最後の判断を人が持つべき業務。社外に出る文面など全件に人の時間がかかる。ゼロから書くよりは短い

全件を人が見直す形になると、自動化した意味がなかったように見えます。実際には、ゼロか100かでは測れません。8割を自動で通して2割を人が見る形なら、手が動くのは全件を人がやっていたときの一部です。効果が残っているかどうかは、人が直した件数を数え続ければ分かるので、この集計だけは残しておく価値があります。

人が補う形にも費用はあります。確認する人の時間が毎月かかり続けるので、減らせた時間から差し引いて見てください。差し引いた残りがわずかなら、やめる判断に進みます。

06やめる判断と、そのとき残すもの

直し方を一巡して、人が補う形にしても、補う手間のほうが元の作業より重い。そうなったら、この業務ではいったんやめる判断です。やめるのは、この業務1つに限った話で、AI全体の話に広げる必要はありません。同じ仕組みでも、業務が変われば間違いの種類は変わります。やめるときに残すのは、次の3つです。

  • 測るのに使った20件と、あるべき答え
  • 間違いを4種類に分けた結果
  • どの直し方で、何がどれだけ変わったかのメモ

この3つを残しておくと、次にモデルや仕組みが変わったとき、同じ20件を流すだけで再開の判断ができます。作り直しではなく、測り直しで済みます。やめると言い出す役を、始めた人と分けておく話と、使った費用を続ける理由にしない話は、AI PoCの本番化に書いたとおりです。

07決める人に出す1枚

改善を続けるにも、人が補う形にするにも、やめるにも、たいてい決める人への説明が要ります。どの結論でも、出す1枚は同じ形で足ります。

項目書くこと
集めた間違い件数と、4種類それぞれの内訳
試した直し方何を変えて、同じ20件のうち何件が直ったか
残っている間違い種類と、業務でどれだけ痛いか
提案する方向上げる・人が補う・やめるのどれか。理由を1行
かかるもの続ける場合の費用と、人が補う場合の毎月の時間

20件でも、種類で分かれていれば判断の材料になります。件数と種類が揃っていれば、決める側が「いつまで続くのか」を確かめる必要もありません。説明が一度で通れば、「もう少し様子を見る」で持ち帰りになる回数も減ります。

08まず、AIが間違えた例を20件集めることから

今週やることは3つです。どれも、AIの設定を触らずに始められます。

  1. 01実務でAIの出力を直した例・使えなかった例を20件集め、あるべき答えを書き添える
  2. 0220件を4種類に分けて、どの種類が多いかを見る
  3. 03多数派に効く直し方を表から引いて、いちばん安いものを1つ試す

そもそもどの業務にAIを使うかを選び直す話はAIに任せる業務の選び方に、外注先との契約や進め方の話はAIエージェント開発の外注にまとめています。

当社は業務の自動化とAIエージェントの受託開発を行っています。集めた間違いを一緒に分類して、どの方向が良いかを判断するところだけでも構いません。精度を追わないほうがよい、という結論になることもあります。必要でしたらお問い合わせからお声がけください。

09よくある質問

Q. 精度は何%あれば実用になりますか

業務をまたいで使える合格点はありません。比べる相手は一般の数字ではなく、いま同じ作業を人がやったときの水準です。人の作業にも間違いはあるので、そこを測ると、必要な水準が思っていたより低いこともあります。もう1つ、同じ90%でも、見逃しの10%と余計な出力の10%では業務での痛さが違います。どちらが痛いかを先に決めてから、その側の数字で判断してください。

Q. AIは使っているうちに自分で賢くなりますか

業務向けの設定では、入力した内容は学習に使われないことが多く、放っておいて上がることは、まず期待できません。精度が変わるのは、人が指示や資料を直したときか、提供元がモデルを入れ替えたときです。モデルの入れ替えは自社の都合と関係なく起きるので、手元に測る例を持っておいて、入れ替えのあとに同じ例で測り直すと、影響にすぐ気づけます。

Q. もっともらしい間違い(ハルシネーション)は無くせますか

ゼロにする方法は、いまのところありません。減らす方法はあります。答えの根拠になる資料を渡すこと、どの資料を根拠にしたかを出力に含めさせること、資料にないことは「分からない」と答えさせることです。そのうえで、間違いが残っても業務が壊れないように、痛い業務では人が確認する工程を置きます。

Q. 外注で作ったAIの精度が出ないとき、開発会社に何を頼めばよいですか

改善の作業を頼む前に、間違いの分類を一緒にやることを頼んでください。分類の結果が共有できていると、追加の見積もりがどの間違いに対する、どの直し方なのかを話せます。金額の根拠と、どこまでやったら終わりにするかを決める土台も、この分類です。指示文を自社で触れる契約なら、指示の書き直しまでは自社で試せます。

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この記事を書いたチーム

合同会社TokyoScaler ビジネス開発部

Google Cloud Partner(Google Workspace正規代理店)として、中小企業・スタートアップのIT環境整備・DX・AI導入を支援するメンバーが、現場の知見をもとに執筆しています。

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この記事の内容、
自社ではどう進める?

「まだ何を頼むか決まっていない」段階のご相談を歓迎しています。現状を伺って、自社でできること・外部に任せたほうがよいことを切り分けるところからお手伝いします。