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DX・IT整備

業務委託先のアカウントと権限|渡す形と終了時の回収

外部の人に仕事を頼むことになり、「アカウントはどうしますか」と聞かれて手が止まる。急ぎだからと社員のアカウントを貸して、そのままになっている——どちらもよくある場面です。先に結論です。最初に決めるのは権限の細かさではなく、アカウントを渡す形です。形は3つあり、終わるときのやりやすさが大きく違います。

いちばん手軽に見える「社員のアカウントを貸す」は、始まりは確かに早いのですが、終わるときにいちばん手がかかります。渡す前に、入れる場所や終了日など4つを書き留めておくと、契約が終わった日にアカウントを迷わず消せます。

情報システムの専任担当がいない会社で、業務委託やフリーランスの方に仕事を頼む側を想定しています。受託で仕事を受け、同時に外部へ頼みもする立場でまとめました。

01アカウントを渡す形は3つ

渡す形は、次の3つのどれかに収まります。どれを選ぶかで、使っている間の管理のしかたと、終わったあとの後片付けが変わります。

渡す形向いているとき終了時にやること
相手のアカウントを招待する相手が自分の会社のアカウントで仕事をしている。共有するのがファイルやフォルダで足りる共有を外すだけで済む。相手の手元に共有したデータの写しが残っていないかは別途確認
自社でアカウントを発行して貸す社内のシステムに入って作業してもらう。やり取りが長く続くアカウントを止めれば全部止まる。作業したデータは自社側に残る
社員のアカウントや共有アカウントを使わせる選ばない形。急ぎのときほど選びたくなる後片付けが、社員のパスワード変更から始まる。誰の操作だったかは分からないまま
渡す形を決める招待か、自社発行か
4つを書き留める入れる場所・権限・終了日・連絡先
狭く始める閲覧から。必要になったら広げる
終了日に回収する止めるのは当日、消すのは確認後
外部の人にアカウントを渡すときの進め方形を決めてから渡す。終了日は最後に考えるのではなく、渡す前に書き留める

迷ったら、相手のアカウントを招待する形から検討します。自社でアカウントを発行するのは、招待では届かない作業があるときです。招待は、共有をやめればアクセスも残らないので、後片付けがいちばん軽く済みます。

02社員のアカウントを貸す形が、あとで高くつく理由

急ぎのときは、いま動いている社員のアカウントを貸す形が最短に見えます。実際、始めるだけなら最短です。ただ、省いた手間は消えたわけではなく、終わるときに回ってきます。

  • 誰の操作か、記録から分からなくなる。何かあったとき、社員と外部の方、どちらの作業か切り分けられない
  • やめてもらう方法がパスワード変更しかなく、貸した社員の仕事も一緒に止まる
  • 2段階認証の通知がどちらに届くのか、途中から誰も分からなくなる

すでにこの形になっている場合も、直せます。社内の共有アカウントも含めた置き換えの手順は共有アカウントのやめ方にまとめています。

03渡す前に書き留める4つ

渡す形を決めたら、開始前に4つだけ書き留めます。専用の台帳は要りません。1枚のメモか、スプレッドシートの1行で足ります。

書き留めること書く内容
入れる場所の一覧頼む作業に使うフォルダ・ツールを列挙する。「全部」にしない
権限場所ごとに、閲覧か編集か。管理者権限は渡さない
終了日と、消す人契約の終了日をそのまま書く。延びたら書き換える
連絡先と2段階認証の受け取り先本人のメールアドレスと、認証がどの端末に届くか

終了日は、なぜ先に書くのですか

社員の退職なら、人事の手続きがアカウントを消すきっかけになります。委託の終了には、そのきっかけがありません。契約を管理している人と、アカウントを管理している人が別のことも多く、誰も気づかないまま、終わった人のアカウントだけが残ります。終了日をアカウントの隣に書いておくのは、この構造への、いちばん手間のかからない対策です。

2段階認証の受け取り先は、なぜ確認するのですか

自社で発行したアカウントでも、2段階認証の受け取り先が本人の携帯電話だと、終了後に自社側でそのアカウントへ入れなくなることがあります。作業データの確認が終わる前に連絡が取れなくなると、打つ手が減ります。受け取り先がどこかだけ、渡すときに控えておいてください。

04権限はどこまで絞るか

迷ったら、閲覧から始めます。権限を広げるのは頼まれてから1分でできますが、一度渡した権限を狭めるには「なぜ」の説明が要り、言い出しにくいためです。狭く始めて広げるほうが、双方にとって気が楽です。

  • 編集が要る場所だけ編集にする。それ以外は閲覧のまま
  • 一時的に強い権限が要る作業は、期間を決めて渡し、終わったら戻す
  • 管理者権限は渡さない。どうしても要る作業は、画面を共有してもらいながら自社側で操作する形も検討する

「必要になったら言ってください」で始める

最初に完璧な権限設計をしようとすると、渡すまでに時間がかかります。閲覧で始めて、足りない場所を言ってもらい、その都度、最初のメモに追記していく。この形なら、開始は早く、記録も自然にたまります。

05終了時の回収チェックリスト

回収を終了日の当日に全部やろうとすると、漏れます。終了日の前・当日・あとの3回に分けると、それぞれ短い作業になります。

時期やること
終了日の前作ってもらったファイルのオーナーを社員に移す。本人しか場所を知らないデータがないか聞いておく
終了日の当日アカウントを止める。招待なら共有を外し、自社発行ならログインを無効にする。外部共有のリンクも見直す
終了日のあと決めた期間を置いてから、アカウントを削除する。いつ誰が止めて消したかを、開始時のメモに1行残す

止めることと消すことを分けるのには理由があります。止めるのは終了日の当日に即やる。消すのは、引き継ぎ漏れがないと確認できてからやる。残す期間は、納品物の検収や請求の確認に必要な長さで決めれば足ります。

06受ける側から見た、事故が起きにくい渡され方

この節だけ、受ける側から書きます。当社自身が、業務委託として仕事を受ける側でもあるためです。受ける側から見ると、事故が起きにくい渡し方には共通点があります。

受ける側が困る渡され方何に困るか
社員のアカウントを又貸しされる自分の操作が他人の名前で残る。何かあったとき、身の潔白を示す記録がない
最初から広い権限を渡される触っていない場所で何かあったときも、自分まで疑われてしまう
終了日が決まっていない契約が終わったあとも入れてしまう状態は、受ける側にとっても居心地が悪い

逆に、入れる場所が最初に一覧で示され、権限が狭く、足りないときに広げてもらう窓口がはっきりしている渡され方は、受ける側も安心して働けます。権限を絞ることは、相手を疑うことではなく、相手を守ることでもあります。触れない場所で起きた問題と、無関係でいられます。

なお、アカウントの扱いを取り決めとして契約書にどう書くかは、契約の専門家の領域です。この記事で扱ったのは、契約の中身に関わらず自社側でできる運用の部分です。

07まず、外の人が入れる場所を数えることから

今週やれることは3つです。新しいツールは要りません。

  1. 01いま社外の人が入れる場所を数える。各ツールのメンバー一覧と共有設定、それに請求書のアカウント数を見る
  2. 02終了した人が残っていたら、まず止める。消すのは確認してから
  3. 03次に外部へ頼むときは、渡す前に4つを書き留めるところから始める

社員の入社・退職にともなうアカウントの手順は入退社のIT手続きに、外注先に生成AIを使ってもらうときの取り決めは外注先の生成AI利用にまとめています。逆に、自社が受ける側として取引先からセキュリティの確認シートを受け取ったときの答え方はセキュリティチェックシートの回答のほうです。

当社はIT環境の整備とアカウント管理の支援を行っています。外の人が入れる場所の棚卸しを一緒にやるところだけでも構いません。必要でしたらお問い合わせからお声がけください。

08よくある質問

Q. 個人のGmailやチャットで作業してもらってもよいですか

業務のデータが相手の個人領域に入ると、終了時にこちらから回収する手段がありません。招待する形でも自社で発行する形でも、業務のやり取りは、自社側から止められるツールに寄せておくと終了時に困りません。すでに個人のツールでやり取りしているなら、次の節目で移す相談をしてみてください。移すこと自体は、相手にとっても仕事とプライベートが分かれて楽になることが多いです。

Q. 複数の会社を掛け持ちしている人に渡して大丈夫ですか

業務委託では、複数社の仕事を並行して受けている方は珍しくありません。渡す側でできるのは、入れる場所を頼む作業の分だけに絞ることと、作業に使う端末の状態(OSの更新やウイルス対策)を一度確認することです。他社の情報と混ざる心配は、場所を絞ってあれば小さくできます。

Q. 契約が終わった人のアカウントが残っていました。どうすればよいですか

先に止めて、それから調べます。止めた時点でリスクは大きく下がるので、原因探しはそのあとで構いません。同じ状態のアカウントが他にないかは、各ツールのメンバー一覧と、有料ツールなら請求書の人数から見つけられます。残っていたこと自体は珍しくないので、責める話にせず、終了日を書き留める運用をこの機会に始めるのが建設的です。

Q. 1つのアカウントを複数人で使ってもらうのは規約違反になりますか

業務ツールの規約はたいてい、1人1アカウントで使うことを前提にしています。契約前に、使うサービスごとに規約の該当箇所を確認してください。ただ、実務で先に困るのは規約より、誰が操作したか分からなくなることです。規約に触れるかどうかに関わらず、外部の方との共用は避けるほうが無難です。

TokyoScaler

この記事を書いたチーム

合同会社TokyoScaler ビジネス開発部

Google Cloud Partner(Google Workspace正規代理店)として、中小企業・スタートアップのIT環境整備・DX・AI導入を支援するメンバーが、現場の知見をもとに執筆しています。

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この記事の内容、
自社ではどう進める?

「まだ何を頼むか決まっていない」段階のご相談を歓迎しています。現状を伺って、自社でできること・外部に任せたほうがよいことを切り分けるところからお手伝いします。